タクシーを降りると、そこは見慣れたアントーニョの家だった。
庭の畑にはトマトはなっていないけれど。
「ロヴィー、ほら、おいで。」
自分の代わりに家出したときに持ってきたスポーツバックを肩にかけ、
アントーニョはその場から動こうとしない俺に焦れたように
先程からずっと掴まれたままの腕を引く。
俺は、それでも動かなかった。
帰るつもりなんて、ないからだ。
「ロヴィーノ。」
「何でだよ。…何で連れ戻そうとすんだよっ!」
好きだって言った。
そしたら、お前はそれを何かと理由つけて断り続けたじゃないか。
それでも、一緒にいたかったから、聞き分けよく今までどおりでいた。
けど、本当はずっと辛かった。
もう限界だった。
フラれた男と一緒に住むなんて、もう嫌だったから。
だから、これで最後にしようと思って「好き」って言った。
それでも、お前は首を縦には振らなかった。
…だから、家を出たっつーのに。
何でわかんねーんだよ…っ!
「俺の気持ちなんかいらねーっつったのはお前だろーが!
なのになんで探すんだよ!なんで連れ戻そうとするんだよ!
中途半端に優しくしてんじゃねーよ!
いらねーなら捨てろよ!!わざわざ拾いにいくようなマネすんじゃねーよ!」
「ロヴィーノ…。」
「俺だってもう大人だし、一人でだって、やっていける。だから、
お前の世話にはもうならない。手、離せよ…。」
手を引こうとするが、更に強い力で掴まれた。
「…ロヴィーノ、おいで。」
「…っ!お前、人の話聞いてたのかよ!?いやだ!!」
「ロヴィー」
「なんなんだよ!なんで、なんで放っておいてくれねーんだよ…!
お前は俺を苦しめて愉しいかよ!この鬼畜野朗!!
てめーなんかもう大っキライだ!!」
うわあああああんっ!
子供のように泣きじゃくった。
アントーニョはそれを黙ってみていたかと思えば、急に手を離された。
(何だよ、結局面倒くせーから放置かよ…クソ)
ガチャっと玄関を開けると、アントーニョはこちらへ腕を伸ばしてくる。
「ほら、おいで。ロヴィーノ。」
いやだ、と首を振る。
「ロヴィーノ、………おいで。」
優しい声音に、微笑みに、本気で腹が立つ。
ずるい。
ずるい。
ずるいんだよ、ちくしょうが!!
そうやって優しく手を差し伸べたりなんかするから。
離れたいのに、また傷つくのが嫌なのに、その手を取ってしまう。
触れると、ぐっと力強く引っ張られて、腕の中に納まってしまう。
そのまま、バタンと閉じられた玄関先で、泣き続ける俺をアントーニョは強く抱きしめた。
「あかんねん、俺…。」
ひくひくと泣く俺の耳に、アントーニョの呟くような声が聞こえた。
「お前が居らんと、死んでまうねん。」
「…トーニョ…っ?」
震える声に、泣いているみたいだと思って、
顔を見たくなって…でも、見られたくないのか、
アントーニョに更にぎゅうっと抱きしめられた。
「あんなん、もう二度とせーへんって、思って…でも、
ロヴィーノ見てると思い出してまうし、触れたい、キスしたい、もっとたくさん…って。
けど、お前まだ子供やし、あかん。俺の汚い欲望押し付けたらあかん。
…そうやって我慢しとったら、いつのまにか、忘れてた。
やから、ロヴィーノが何回も言うてくれたのに、無碍にしてもうた。
最低やんな…。」
「アン ト ー ニョ ・・・。」
「お前が居らんくなってから、やっと気付いてん。
無くしたらあかん、一番大切なもんやったのに。」
腕の力が緩んで、俺はおずおずと顔を上げた。
涙を浮かべたペリドットの瞳に、ふと笑った。
「なんだよ……それ……。本当、お前…サイテーだな。」
「うん、ごめんな。」
ずるいし、最低だし、本当最悪。
だけど、嫌いになんて、なれなかったんだよ。
どんなに離れようとしても、忘れようとしても、無理だった。
「ごちゃごちゃ言ってねーで、簡潔に言えよ。」
「じゃあ、俺はロヴィーノのこと愛してますっ!これでえぇ?」
足りないな。もっと、言えよ。もっと、たくさん。
愛してるって言えよな!
・…・…・…・…・…・…・…・…・……・…・…・…・…・…・
ずるい大人な親分に翻弄されるロマが好きすぎるんだ。
あと、悩みまくってすれ違いまくって、それでも最後は一緒に笑ってる。
ハッピーエンドな西ロマが大好きです。
幸せ西ロマEDは、心をほっこり暖めてくれますよね。
西ロマ大好きだー。
2010/12/01 初出
2013/09/29 up
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