■小悪魔な彼■ ※ご注意ください※ ・一般人西×芸能人ロマパラレル ・現代日本っぽい        ・糖度50%オフ       ・…・…・…・…・…・…・…・…・……・…・…・…・…・…・

『絶対、振ったこと後悔させてやる!!』




まだ俺が青い春を満喫中の頃、幼馴染で弟分だと思っていたロヴィーノに、
驚くべきことに、告白をされたのだ。
もちろん、恋だの愛だの、そのテの意味で。
まさかそんなふうに想われているとは思っていなかった俺は、
突然のことに頭が真っ白になったのを、今でも覚えている。
何しろ、ロヴィーノは男の子なのだ。
ちっちゃい頃は一緒に風呂に入ったことだってあるんだ。間違いはない。
それで、まぁその時は『そんなふうに思ってない』と断った。

『多分、一生変わらない。』

…そう、思って…いた。

ロヴィーノの突然の告白から数日後、再びロヴィーノは俺の前に現れた。
そして、言ったのが、冒頭の台詞である。

見てろよ、このハゲー!!ヴェーハハハハハ!
と、高笑いしながら去ったロヴィーノのは、現在。
ファッションモデルに、CMに、ドラマ、バラエティに引っ張りだこの
超有名人の芸能人様となっていた。

本屋の雑誌売り場で何となしに開いた雑誌には、ロヴィーノが挑発的に艶笑していた。
元々、見目は良かったが、最近はそれに何とも言えない色気も出てきて…あかん。
良く知っている人物のはずなのに。
俺が知らない顔で笑う、ロヴィーノは別人のようで苦手だ。
ぱたんと雑誌を閉じて棚に戻し、さっさと本屋を後にした。


夕飯の買出しをして、アパートに帰ってくると、
扉の前に色付きのグラサンをかけた青年がいた。
その人物は俺が帰ってきたのを見とめると、眉間に皺を寄せ憮然と言い放つ。

「遅い!俺を待たせるんじゃねー!!」

連絡もなしにいつも突然やってくるくせに、尊大な態度に思わず苦笑する。
有名になっても、変わらない、変わっていないところに安堵する。

「ごめんなー、今開けるわぁ。」

かぎを出して、ドアを開ける。
と、家主よりも先に部屋に入ったロヴィーノは、ソファに座ると
被っていた帽子やサングラスを外してテーブルに置くと、
後から入ってきた俺に、こう言うのだ。

「早く、メシ!」

そうやって、いつも何故か突然やってきてはメシを食いにやってくる。

「はいはい、ちょっと待っててなー。」

上着をハンガーにかけ、ネクタイを外してエプロンをつける。
人に言わせると、俺は彼に甘すぎるそうだ。
けれど、仕方ないと思う。
どんなに尊大な態度だろうが、わがままだろうが、
彼が俺のところに来てくれる。
それだけで、嬉しくてしょうがないのだから。

 

あの日以来、連絡さえ取れなくて、結構心配していたつもりだ。
何せ大事な弟分で、家族みたいなものだったから。
フェリちゃんは居場所を教えてくれないし、
段々俺も受験やら就職やらで忙しくなってきた頃に、何気なくTVをつけたら
ロヴィーノが出ていて驚愕した。

そう、彼はあの後、前々からスカウトされていた雑誌のモデルをし始めたらしい。
そうして段々と脚光を浴び始め、ついにTVにまで出るようになったのだとか。
…俺がTVでロヴィーノを見た、とフェリちゃんに連絡すると、
そのようなことを物凄く嬉しそうに、自慢してくれた。

TVの中で笑うロヴィーノは、もう自分が守ってやっていた弟分ではなくなっていた。

酷い焦燥感に苛まれた。
自分の知らない顔で笑うロヴィーノは、もう自分の手の届かない
遠くへ行ってしまったような、どうしようもない寂しさが胸を突く。
そうして、気付いてしまった。

あぁ、自分は確かにあの子が好きであったのだ、と。

離れてしまってから、遠くに行ってしまってから気がつくなど。
鈍感、鈍感と言われるわけだ。
自分の気持ちすら、見えていなかったのだから。


酷い自己嫌悪に陥っていた俺の目の前に、彼は再び現れた。
彼が知らないはずの、一人で住んでいるアパートの部屋の前に、
先程と同じように立っていたのだ。
そして開口一番に口にしたのが『腹減ったからメシ食わせろ』だった。


海鮮たっっぷりのパエリアと、トマトスープをテーブルに置くと、
彼は何も言わずに食べ始めた。

頼めば作ってくれるような女の子なら、山ほどいるだろうに。
決して暇ではないだろうし、それなのに。
彼はいつでも時間があれば、俺のところにやってくる。
ほんの少しだけ、優越感を味わう。
けれど、彼がここに来る一番の理由はきっと。



自分を振ったことを、後悔させるため、だ。

 

彼は俺が『後悔してる』と言うのを待っているのだ。
そして、好きだと告げてくれば素気無くばっさり切るつもりなのだ。


「…美味いか?」
「まぁまぁだな。…そうだ、これやるよ。」

メシ代だと思って有難く受け取れ、このやろー。
そう言ったロヴィーノが渡してきたのは、今度発売される写真集…らしい。

「まだ発売されてねぇ、刷りたてだぞ。」
「へぇ、そうなん。」
「しかも、俺のサイン入り。オークションに出せば結構いい値がつくだろ。」
「いや、売ったりせぇへんよ。…おおきに、もらっておくわ。」

写真集というだけでも、結構根が張るし、
別に高級食材を使っているわけでもないのだ。
それだけでもお釣りが出そうだ。
…そうでなくても売ったりなど、出来るわけがない。

「…ふん。またそうやって、箪笥の肥やしにするのかよ。」
「いやいや、そんなことは。」
「どうだかな。…風呂借りるぞ。」
「あぁ、えぇよ。」

パエリアもスープも綺麗に平らげたロヴィーノが、風呂場へ入ると、
そっと写真集を広げる。

普段着のようなラフな服装のものから、スーツや和服、さらに。

「水着とか………サービスしすぎやろ……。」

一体どれだけの人がこれを買うのか解らないが、
大勢の他の奴らに、こんな姿を見せるのか思うと…。

(なんか、無性に腹立ってくるわー…。)

複雑な気持ちを抱えて、ロヴィーノが風呂から出てくる前に
食器を片してしまうと、入れ違いで自分も入る。
すれ違い様に彼から香る匂いが、自分が使っている石鹸の匂いで
妙に嬉しくなることなど、きっと彼はまだ知らない。

 

『好き』


『好きや』

 

そう言ってしまえば

 

彼は、自分から完全に離れてしまう。

 

解っているから、絶対に言えないその言葉を。

 


シャワーの音にかき消して貰いながら、呟いた。

 

 

 

 

風呂から上がると、彼は自分のベッドの上でドラマの台本を読んでいた。
俺が冷蔵庫から取り出したミネラルウォーターを飲んでいると、
『俺にも寄越せ』とばかりに視線を投げかけてくるので
飲みかけのそれを手渡すと、戸惑いもなく口をつけた。

(間接キスやん……とか、絶対思うてへんのやろうなー…)

ゴクゴクと景気良く最後まで飲み干して、空になったものを
投げて戻してきた。
それも黙って片付けると、サイドテーブルの小さな明かりだけ残して、
部屋の電気を消した。
ロヴィーノは台本をサイドテーブルにおいて、服を脱いでベッドの中に潜り込んだ。
そのあと、自分もその隣に寝転がった。
シングルのベッドに男二人で寝ると、かなり狭い。
自然と密着する体は、どうしようもないわけで。
高鳴る心音も、熱くなる身体も、どうか気付かれませんように。
そう、いつも願ってしまう。

バレたら、終わる。

 

そうしたら。

 

ふと視界が影に覆われ、顔を上げるとロヴィーノがいた。
ロヴィーノはゆっくりと俺に顔を寄せてきて、そして。

「…ん」


重なる唇。啄ばむように優しく触れられ、心臓が跳ねる。
そうして、次に舌が差し込まれて、深くなる口付けに目を閉じた。
彼がこうしてキスをしてくるのは、初めてではない。
彼がこの部屋に訪れるようになってから、ほぼ毎回のように。
…まぁ最初はかなり驚いたが、今は少し慣れてきた。
黙ってされるがままにしていると、やがてロヴィーノは唇を離す。

「…ふん。つまんねぇの。」

そう呟きながら口元を拭って興味が失せたとばかりに
背を向けてシーツに潜り直す。
その頭を撫でて『おやすみ』と言えば、『触るな』と代わりに声が返ってきた。
それに苦笑しながら、目を閉じた。


彼のキスには拒否はしないが、決して自分から動いてはいけない。
自分に欲情させるために、欲しいと言わせるために、
彼は俺にキスをするのだ。
それなら、何もしないでいよう。
気持ちに悟られれば、終わる。
それくらいなら、一生言わないでいよう。

そうすれば、俺のところへ、彼は何度でも戻ってくる。
例え、彼に嫌われようと。

 


『好き』も『愛してる』も、




そして。


 

『後悔してる』…とも、言わないでいよう。

 

 

この、綺麗で可愛い小悪魔(アイドル)が、自分の傍にいてくれるのなら。

・…・…・…・…・…・…・…・…・……・…・…・…・…・…・

背を向けたロマが、泣いてることに気付かない西。
とっくに報われているのに、気付かないロマ。
見てるこっちがやきもきしてしまう。
そんなすれ違い西ロマが大好物です。←

言わずと知れた(?)「だから、好きと言わない。」の元ネタです。

2010/9/18 初出
2013/2/16 up