■僕はその恋のはじまりを知っていた■ そして、その恋が終わるなんて思ってもみなかったんだ。      






アントーニョ兄ちゃんが引っ越す前の日。
引越しのお手伝いに行っていた兄ちゃんが、泣きながら帰ってきた。

あの日…兄ちゃんとアントーニョ兄ちゃんのデート中にお邪魔しちゃってから
多分、それからずっと様子が変だったのは、分かっていた。
けど、表面上はいつもどおりだったから。

(おかしい…?あれ?俺の勘違い??)

気にはなっていたんだけど、でもそれを指摘せずにいた。
けれど、まさか。
二人の仲が拗れてしまっていたなんて知らなくて。
そんなの全然想像もしていなくて。
兄ちゃんがアントーニョ兄ちゃんと別れた、と言ったのは散々泣いた後だった。




俺は、兄ちゃんが恋に落ちた瞬間を知っている。
昔、何がきっかけかは分からないけど、
兄ちゃんは近所のガキ大将に目を付けられていて。
ある日とうとう仲間を引き連れて兄ちゃんに暴力を振るおうとしていたのを、
アントーニョ兄ちゃん(や、フランシス兄ちゃん)が、逆にそいつらを叩きのめしてしまった。
俺は兄ちゃんの隣に駆け寄って、それを呆然と見ていて。
ふと、兄ちゃんをみたら、その視線はあの人だけを追っていた。

アントーニョ兄ちゃんは、あの時から、兄ちゃんの中では特別で。
家族よりも、誰よりも、信頼のおける、ヒーローになっていた。
そうして、少しずつ、少しずつ、小さな恋を大切に育ててたのを
俺は傍でみていたから、知ってるよ。
幼馴染としてじゃなくて、恋人として付き合うことになったって。
物凄く恥ずかしそうに、不器用ながらも嬉しそうに、幸せそうにしていたことも。
喧嘩したって、酷いこと言ったって、いつも後で物凄く後悔して、
自己嫌悪に陥って、それでも仲直りして、嫌われてなかったって、ほっと安堵してたことも。

素直に口にはしないけど、好きで好きでしょうがないよ。
って、兄ちゃんの態度を見れば明らかで、そんな兄ちゃんが可愛くて。
どうか、ずっとその恋が続きますようにって。
神様にお願いたくさんしてたんだよ。

それなのに。






どうして、こうなっちゃったの。








「うっっえぇぇ… っく」
「兄ちゃん、兄ちゃん、もう泣かないで〜」





アントーニョ兄ちゃんの、ばか。



俺は、兄ちゃんの涙を直ぐに止めることなんか出来ないんだよ。
お願いだから、これ以上泣かないで。


俺に出来るのは、
その痛みが薄れるように同じように、涙を流すことだけだった。



・…・…・…・…・…・…・…・…・……・…・…・…・…・…・

「さよなら、世界でいちばん大好きな人。」のこぼれ話。
伊ロマのようですが、このイタちゃんは純粋にロマが大好きなだけです。←

2010/11/17 初出
2013/2/23 up