Falta de chocolate

2月14日。バンレタインデー。
バレンタインといえば、恋人や意中の相手に告白する日というのが
定番である。
これはそんな日の、とある学校の放課後の一コマである。




アントーニョ・フェルナンデス・カリエド。
彼は綺麗にラッピングされた包みを大事に胸に抱き、
数学準備室のドアの前に立つと、深呼吸した。
今から意中の相手であるロヴィーノ・ヴァルガス先生に
その手の中のものを手渡しに行こうとしていた。

俺は、ロヴィーノ先生が好きや。
彼の人と接しているうちに、どんどん惹かれていき、
今では本当に先生としてではなく、一人の男として大好きだ。
…相手が男であろうと、もう今は気にならない。
性別なんか、別にどっちでもえぇねん。
ただ、ロヴィーノ先生がむっちゃ好きや。ってだけ。

彼の人、ロヴィーノ先生は容姿が半端なく綺麗や。
モデルさんかっちゅーくらいに、ほんま美形。
いっつもビシっとセンスの良いブランドスーツを身に纏い
これまたセンスの良いネクタイを締めてやってくる。
普通、これだと他の教師や男子生徒のやっかみの対象となる
わけだが、ロヴィーノ先生はほんまに嫌味なく着こなしとるから
思わず皆が暫し時間も忘れて見惚れてまう。
格好良くて男前。だが、口を開けば毒舌。
(いや、そこまではいかんけど、口が悪いなっていうか)
馬鹿、阿呆、コノヤロー、畜生、死ね。…エトセトラ。
まぁだから、個人的に仲良くなろうっていう輩はあまりいない。
幸いなことに。…今は。

でもなー。そんなところも、むっちゃかわえぇと思うんよー。
もっと罵って!!って思うんよ。え?変態?
ちゃうよー。これはロヴィーノ先生限定やで!
他のやつにアホだの死ねだの言われたら、お前が死ね!!!
って思うしー。なぁ、そうやろ?

ロヴィーノ先生、好きやで!めっちゃ愛しとるよ!
そんな言葉の数々は今まで何度もした。
(その度にアホとか死ねryとか返されるわけだが)
今はまだ、信じてくれへんみたいやけど。
ずーっと言い続けてたら、いつか…って思ったらあかんかな?
なぁ、先生。

俺、ほんまに好きなんよ?





「ロヴィーノ先生ー♪」

ガラと開けたドアの音に『またお前か』とげんなりと振り向かれる。
そんな顔されても、めげへんで!!

「何だよ。もう授業終わったんだから、早く帰れクソが。」
「先生、今日何の日か知っとるー?」
「バレンタイン、だろ。………って、まさか…。」

そう、そのまさか。

「愛しのロヴィーノ先生に俺の愛を籠めたチョコレートのプレゼントやで!!」

茶色の小箱に赤いリボンを巻いたそれをロヴィーノに差し出す。
が、先生はそれを一瞥くれただけで受け取ってはくれなかった。

「先生、貰ったってやぁ!」
「アホか。男にチョコ貰っても嬉しかねーんだよ!」
「え〜〜っでも、一生懸命作ったんやで?」
「はぁ…あのな…俺は忙しいんだよ!邪魔すんな!」

キっと睨まれて、黙る。
すると、先生はまた本棚から取り出した何かの資料に視線を戻した。
完全に相手にされていない。
そんなことは解っていたが、それでもその場から動かなかった。

先生の横顔を見てた。
授業のときも、数学苦手やからいつもサボったりしてたけど
先生の授業やって思ったらサボるわけにもいかんくて。
全然解らへんけど、先生の声好きやわ〜とか。
チョークを持つ、細くて長い綺麗な指だとか。
黒板の字が意外と綺麗なところとか。
生徒の質問にちょっと考えるように顎に手を当てて
それから、解りやすく説明してやるところとか。
見てるだけで、なんだか楽しくて。
によによしてたら、丸めた教科書で叩かれたりしても
やっぱり、好きや〜って思ってまう。

「…じろじろ見んなっ!」

俺の視線に耐え切れなくなったのか、ポコポコ怒りながら
頬を赤くする先生が、これまた可愛えねん!!
ほんまかわえぇ!

「そんな怒らんと、チョコ受け取ってーや。」
「だっかっらっ!男からのチョコなんていらねーんだよ!
大体、お前なぁ…!」
「兄ちゃ〜〜〜〜〜んっ!」
「うぉっ!?」

眉間に皺を寄せて怒る先生に、がばっと抱きついてきたのは、
ロヴィーノ先生の弟で、俺の1コ下のフェリちゃん。
先生と違うて素直で可愛いコぉや。けど…。

「っフェリシアーノ!学校では先生って呼べってあれほど…!」
「ヴェ…ごめんなさぁい…。」

まるで子犬が主人に叱られたようにしゅん。と頭を垂れる。
その様子に先生は、ちょっとキツく言い過ぎたよーな気ぃになったんか、
『つ、次から気をつけろ。』と言いながらフェリちゃんの頭をなでなで。
(先生、身内にはあまあまやんなぁ。フェリちゃんえぇなぁ…)

「で?何の用だよ。」
「あ、うん!あのね、兄ちゃんにこれを渡そうと思って……はい!」

フェリちゃんは持っていた紙袋から可愛くラッピングされた
淡いピンク色の包みを一つ、先生に手渡した。…まさか!

「バレンタインのチョコレートだよー!」

(やっぱりか――――――――!!)

どないするんやろって見守っとったら先生は、
それを受け取って…って、なんでええええ!?
フェリちゃんかてかわえぇけど、男の子やーん!!
フェリちゃんのはえぇのん!?なんでやー!?

「兄ちゃんのは甘さひかえめにしてあるからね!」
「おぅ。グラッツェ……って、お前…『のは』ってなんだこのやろー!!
まさか他にも誰かに渡したのか!?」
「え、うん?ルートとか…。」
「馬鹿っお前何男にチョコなんかやってんだよ!
なんか変な勘違いされたらどーすんだっ!」
「えー大丈夫だよぉ。あげたの友だちだけだもん。」
「もんじゃねええええ!!いいか、こういうのはな、本命の相手だけに渡すもんだ!
友だちだからって義理だろうがホイホイあげるもんじゃねーんだよ!!」

なんだかんだゆーても、先生フェリちゃんのこと大好きなんやなぁ。
えぇなぁ。フェリちゃんが羨ましいわぁ。

「ヴェ〜…分かったよ。じゃあ来年からは兄ちゃんだけにあげるね!!」
「フン。分かりゃいいんだ、分かりゃ。」

(えええええええええ)

ちょっと待ってや。今の流れで何でそうなるん!?
本命の相手だけに渡せ、ゆーて…それで
じゃあ兄ちゃんだけにあげるね!って、それってつまり………。
暗にフェリちゃんの本命は先生ってことなんっ!?
しかもそれで先生はえぇのん!?

何この流れ。何やのこれ。
俺、完全に空気やん!
嫌やあああっいくらフェリちゃんでも先生は渡されへんっ!!

「じゃあ先生っ俺のも受け取ってや!」

フェリちゃんに負けじと先生の腕を掴んで引き寄せる。

「あれー?アントーニョ兄ちゃん居たんだー全然気がつかなかったよー。」
「最初から居ったでー。それより、先生俺のも貰ってやー!」
「おいっコラ!ひ、引っ張るな!つーか、二人とも離れろ!うぜぇ!」
「ヴェ、アントーニョ兄ちゃん、兄ちゃんから離れてよー!」
「フェリちゃんが離れたら俺も離れるで!」
「…アントーニョ兄ちゃんが離れればいいでしょ。」
「ほな、フェリちゃんかて離れたらどや。」
「ヴェー…アントーニョ兄ちゃん、年上なのに大人気ないよー。」
「フェリちゃんこそ、いい加減兄離れしたらどーやねん。」
「「……………」」←無言の睨み合い。
「…っお前ら…いい加減に…っ!!」

一歩も引き下がらない俺とフェリちゃんに、いい加減
キレたロヴィーノ先生は怒声を浴びせようとした瞬間。

「おやおや…ロヴィーノ先生、随分と人気者ですねぇ。」
「っ本田先生!」
「あ、菊ちゃんせんせー!」
「本田せんせー!」

柔和な笑みを浮かべた本田先生に、ロヴィーノ先生は焦ったように
俺らの腕を振りほどいた。あー。

「先生、何か御用でしょうか。」
「えぇ、もう直ぐ会議なのにまだ戻られないので、
生徒に捕まっているのかと思いまして…案の定、ですね。」
「え…うわっもうそんな時間…っす、すいません!」
「大丈夫ですよ、まだ少し時間もありますから。
でも、お二人とも、あまり先生を困らせてはいけませんよ?
(しかし、個人的にはもっとやれとは思いますが…!)」
「「は、はーい…。」」

ふふふっと微笑まれ、相変わらず考えの読めない人やなぁ。
…と、こちらも苦い笑みを返してしまった。

「あっあの、本田先生、良かったらこれ…どうぞ。」
「「えっ!?」」

ロヴィーノ先生はそっと青い箱に銀のリボンが結ばれている小さな箱を
本田先生に手渡した。…って、えええええええええええ!?

「あ、あのっいつも、お世話になっているし、その、だから…!」

((まさかの日ロマオチ…!?))←西&伊
(はい、デレキタ――――――――!!)←日

ちょっ、先生さっきフェリちゃんに本命だけにしとき!
ってゆーたやん。せやのに…!
…まさかほんまに先生の本命、本田せんせーなん!?

「あの、中身…日本酒が入ったボンボンショコラなんですけど。」
「そうですか…。嬉しいです。どうも有難うございます。」

にっこりと笑った本田先生に、明らかにほっとしたロヴィーノ先生。
…え、何これ!?マジなん!?

「今度、飲みに行きましょうね。
(そしていろいろネタになりそうなことを聞き出してry)」
「はい、是非!」
「ヴェエエエエっずるいよーっ菊ちゃん先生!」
「せ、せやせや!!俺かてまだデートに誘ってへんのにいいい!!」
「てめーら、うるっせぇ!!お前ら早く帰れよ、じゃあな!」

そう言って本田先生を連れたって出て行ってしまった。
えー嘘やん。何これ、完全にスルーされてもーた…。
俺の手の中にはチョコの入った包みが残った。

「…あーあ、行っちゃったぁ…俺も帰ろうっと。
じゃあね、アントーニョ兄ちゃん。…受け取って貰えなくて残念だったね☆」
「フェリちゃん…追い討ちかけんでやぁ…。」

そう言うも、フェリちゃんは落ち込む俺を無視して、さっさと部屋を出て行った。
うっうっ…酷いわぁ…流石の俺でも泣きそうや…。
ここにそのままいても、もう意味がないから、
仕方なく準備室から出て、帰ろうと玄関ホールへ向かった。

はぁ、このチョコどーするかなぁ。
と考えていると、ふと視界にゴミ箱が映った。
自分で持って帰って食うのも、なんか虚しい気ぃするし…。
捨てようか、と思っていると、背後からにゅっと手が伸びてきて
チョコの入った箱を奪われた。

「ちょっ………!」
「ばーかっ!何食べ物粗末にしようとしてんだよ!」
「せ、先生…!や、でも…。」
「…し、仕方ねぇから、これは俺が貰ってやるから…か、感謝しろ、このやろー!!」

頬を赤く染めて、プイとそっぽを向く先生は、
よく見れば、走ってきたのかちょっと息が荒い上に
いつもきっちりしているのに、シャツの裾が出てる。
もしかして、先生なりに気を使って受け取りにきてくれたんかなぁ。
そのことに、なんかもう言葉も出ないくらい、嬉しくて頬が緩んだ。

「ありがとう、先生!大好き!愛してんで!」
「お、お前のためじゃねーんだからな!これは!
ちょっ、チョコレートのためなんだからな!」
「うん、でも嬉しいから。」
「…フン、そーかよ…。」



ついさっきまで行き場を失っていたチョコレート。
今は大好きな人の腕の中に納まって。

俺の気持ちは確かに先生に届いたって思ってもえぇんかな?

今日、この日だけに限らずいつでも。
俺は先生だけにありったけの大好きを伝え続けるから。
いつか、いつでもえぇよ。
俺のことも、好きになったってください。










END






















西がなんか女々しくてすいません。
なんかまだ高校生だし、子供っぽく!とか思ったら
こうなりました。実にすいません…。
そして、伊VS西×ロマが好きですいません…。
伊兄弟はナチュラルにどっちもブラコンだと萌えます。
日ロマも好きで混ぜました。実にカオス。
反省してますが、後悔はしてません。←

あ、実は本田先生はロマの高校時代の恩師という設定があります。
だから、本田先生には割りと素直です。
頑張れ親分。ライバルは結構いるよ!しかも結構強力な。(笑)
あと、イタちゃんは多分ロマの気持ち、薄々気付いてる。
多分、本人よりも解っている。だから邪魔してる。みたいな感じです。
学パロ楽しい。また書きたいな。
ちなみにタイトルは「チョコレートの行方」って意味…だと思う。
日本語をそのまま翻訳して貰っただけだから、間違っていると思うけど。(笑)
ってことで、ここまで読んでくださって有難うございました。

2010/2/21 up