俺の可愛いヒト

久しぶりに世界会議にロヴィーノがフェリちゃんとともに参加していた。
やっぱり二人ともかぁええなー。楽園やんなぁ。
ニヨニヨしながら見ていたら、目が合った瞬間。
ロヴィーノに思い切り睨まれた。
…それ以来、目が合うことはなかった。

ごめんやて、ロヴィーノ〜。
でもお前らが可愛すぎるのも悪いと思うねん、親分は。

休憩時間にちょっとフランシスと談笑していたら、
いつの間にか二人ともいなくなっていた。
ルートや本田はいたから、二人だけでジェラートでも
買いに行ったのかもしれない。
…何となく気になった俺は、その辺を探してみることにした。
それに、今日はまだ大事な子分と会話もしてないことに、
今更気が付いた。
そもそも、今日はあの一瞬目が合っただけな気がする。

(あ。あかん。なんやそう思ったら…)

猛烈にロヴィーをぎゅ〜って抱きしめたくなってもーた!
そんなことをしたら、すぐに頭突きを見舞いされるのは
分かっていたが、やっぱりそれでも。
触れたいって思う。

ロヴィーノに触れていいのは俺だけ。
他の誰にもそれだけは許されへん。
もう親分でも、子分でもないけど。
…ロヴィーノも、そうだと思っていた。





エレベーターに乗ろうと思って、下の階へ降りるボタンを押して
待っていると、階段の方から声が聞こえた。
聞き覚えのある声。
近づいて耳を欹てた。



***



「にいちゃ〜ん、泣かないでよ〜〜〜」
「うっせぇ!泣いてなんかねぇよっちくしょうがぁ!」

階段の一番下の段に座り込んでる兄ちゃんを宥めながら思う。
俯いているから顔は見えないけど、そんな涙声じゃ
泣いてないって言われても、説得力ないよね。

「ヴェー…ごめんってば、にいちゃ〜〜〜ん…。」
「うっせぇ!…も、いいからお前はじゃがいも野郎達と
仲良くしてりゃいいだろっ!」
「えー…泣いてる兄ちゃん放っていけないよー。」
「だからっ泣いてねぇつってんだろが!しつこいぞコノヤローが!」
「ヴェー………――――――――本当に行ってもいいの?」

ピクンと肩が揺れた。分かりやすいよねぇ、本当に。
内心くすりと笑うも、それは顔に出さずに小さく息を吐いた。
そして、兄ちゃんの横を通り過ぎようと階段を昇ろうとすると、
兄ちゃんは焦ったように顔を上げた。
やっぱり少し涙目の瞳と目が合う。

「…やっと顔上げてくれた。」
「っちくしょっ騙しやがったなこのやろー!」

ポコポコ怒るけど、やっぱり『ルートと仲良くしてこい』は嘘だったようだ。
素直じゃないよねぇ、本当に。
そこが可愛いんだけど…うん。やっぱり兄ちゃんは可愛いよね〜。
大好きだよ。

…あの人がいう『トマトみたいな』顔の兄ちゃんの両頬を両手で包み込む。

「どこにも、いかないよ…俺は。兄ちゃんの傍にいるよ。」

そういうと、『ちくしょー』とか『このやろー』とか悪態を吐く
兄ちゃんの口は、きゅっと引き結ばれて静かになった。
代わりに目尻に溜まっていた涙が一滴。
頬に触れていた俺の手を濡らした。

『だから、大丈夫だよ。』

そういう意味でキスをした。
兄ちゃんは逃げずにそれを受け止めて、答えてくれる。
こういうふうにキスが出来る仲になるのに時間はかかったけど
諦めないでよかったって、思った。

大好きだから。
弟としての愛情だけじゃ足りない。
兄ちゃんの特別が欲しかった。
どんな手をつかっても。





だから、





上の階から痛いくらいの視線には、





気が付かないふりをしておく。







今は。









「んっふ…ぅ。」
「兄ちゃんかわいー。…でも、そんな顔じゃ、会議に出られないね。」

ていうか、出させないよ?
にっこり笑うと、兄ちゃんの顔がトマトみたいになった。
可愛いなぁ。そう思いながら
自分のスーツのポケットに手を突っ込む。
その中の鍵を兄ちゃんのスーツのポケットに入れた。

「皆には体調不良ってことにしとくから、先に部屋に戻っててね?
…大丈夫だよ。終わったら俺も直ぐに行くから。ね?」

子供に言い聞かせるみたいにそう言うと、
いつもなら頭突きの一つでも飛んできそうなのに
今はとろりとした瞳で、小さく頷くだけ。
何か言いかけたけど、その口は噤んだまま、ゆっくりと立ち上がる。

「は、早く来いよ…っこのやろ。」
「うん!気をつけてね!知らない人にはついていっちゃだめだよ〜!」
「っどこのガキだっ畜生が!」

ぶつぶつ文句言いながら、俺の横を通り過ぎて階段を降りていく。
その背が見えなくなるまで手を振って見送る。

さて、と。


口の端を上げて笑う。
一部始終を盗み見ていたあの人を、どうしてくれようか。



階段を昇って、視線の主に笑って言った。

「盗み見なんて、悪趣味だね…アントーニョ兄ちゃん。」
「……………フェリちゃん。」
「ヴェー…そんな怖い顔しないでよぉ。」

そういう顔、兄ちゃんには絶対見せたことないでしょ?
だめだよ。大事ならちゃんとしっかり捕まえておかないと。
好きならちゃんと伝えてあげないと。
兄ちゃんはああ見えて、とっても寂しがり屋さんだから。




だから、隙が出来る。



…脆い人だから。





「…俺、兄ちゃん大好きだから。ずっと好きだったから。」

だから…長い間兄ちゃんを独占し続けたアントーニョ兄ちゃんが
ずっと嫌いだった。

「でも、もう兄ちゃんは俺のだから。…アントーニョ兄ちゃんの
子分だったロヴィーノは、もういないんだよ。残念だったね。」

そう言って、笑ってあげた。
あなたが「かぁええ」っていう笑顔でね。

「その笑顔、めっちゃ好きやったけど…今はほんま憎たらしいわ。
…なんで同じ顔なんやろ…そうでなかったら殴ってやるんに…。」
「ヴェーっアントーニョ兄ちゃん怖いよぉおおお!…―――――なんてね。」



悔しい?
憎い?




最高の褒め言葉だね。







…―――――――――もう兄ちゃんは俺のもの。





END
両思いな伊ロマに禿げ萌えた勢いでやらかしました。サーセン。 伊ロマ←西。黒伊VS黒分テラモエス。 それにしても、花景は一体いくつ世界会議ネタを書くつもりか。 だって好きなんだよ…!スーツが!← これはまたいつか、もっと話膨らませて書きたいです。 2009年9月5日 初出 2009年9月30日 up