あれから数日後、私は以前の教え子たち数人と連絡を取り合い、 あることを提案したのでした。 今回来たのは、可愛らしい外観に 店内はセンスのいいアンティークな雰囲気のフレンチレストラン。 カリエド君の友人でもある、フランシス・ボヌフォア氏のお店です。 今日のために早めに店じまいしてくださり、 さらには自慢の料理に、食後のコーヒーとデザート付きです。 また今度何かお礼をせねばいけませんね。 さて、そんな私の隣にはロヴィーノ君の弟のフェリシアーノ君。 さらにその隣には彼の友人、ルートヴィッヒ君。 向かいにはそのルートヴィッヒ君のお兄さんでもある、 カリエド君の友人、ギルベルト君と、ボヌフォア君。 さて、本題に入るとしましょうか。 「実は皆さんにお願いがあるんです。 皆さんもご存知でしょうが、私の教え子でるロヴィーノ君とカリエド君が 結婚しましたよね。」 「そうそう、あいつら!やっとかよってカンジだよな〜。」 「ほんと、見ててかなりやきもきしたもんだよ。」 というのは、カリエド君のご友人お二方。 全面的に同意です。しかし、すれ違い両片思いは萌えポイントでもあります。 「それで、お願いというのは私たちで彼らのお祝いをしませんか、 ということなんですが…。」 「あぁ、俺らも何にもしねーのはあれだしさ、集まって飲もうぜーとは言ってたんだよ。」 「そうそう、場所ならここ使って構わないし。」 「そうですか。それは有難いです。」 場所の確保も出来ましたし、全員のスケジュールを確認し合い日時を決め、 次に各自の役割分担です。 「料理は俺がするよ。あと、ウェディングケーキは必須でしょ。」 「そうですね、お願いします。」 「フランシス兄ちゃんのご飯美味しいから、楽しみだなー。」 と、出されたケーキを美味しそうに頬張るフェリシアーノ君。 ふにゃりとした笑顔に、和みます。 「新郎たちの衣装は、私とフェリシアーノ君、 それからルートヴィッヒ君で作りましょうか。」 これは、どうせなら手作りで、というフェリシアーノ君の希望です。 「ちょっと、待て!俺は裁縫は得意ではないぞ!!」 「ですが、授業の成績は悪くなかったと思うのですが。 それに、不器用でもないでしょう?」 「大丈夫だよ〜、フォローは俺がするし〜。」 おやおや。いつもフォローするのはルートヴィッヒ君のはずなので、 これは少し珍しいですね。 「じゃあ俺様は美味いビールでも仕入れてくるか。」 「ギル、それは自分が飲みたいだけでしょー。」 「ボヌフォア君はお一人で大丈夫ですか?」 「あぁ、へーきへーき。可愛い奥さんに手伝ってもらうし…ねぇ、マシュー?」 「「え?」」 「は?」 そこで初めてボヌフォア君の隣に、マシュー君がいることに気がつきました。 私でさえも気付かぬほどの、気配消しっぷり…!侮れませんね!! 「うおおおおっビビったー!!何だよ、居たのかよ!?」 「失礼な子だねー。最初から居たでしょうに。」 「す、すまない、気がつかなくて…。」 「いえ、いいんです…慣れてますから…。」 苦笑するマシュー君に、慰めるように頭を撫でるボヌフォア君。 まさかこちらもすでに出来上がっていたとは…! …あれ? 「…奥さん、ですか?」 「そう、奥さんv結婚して3年になるけど、まだまだ新婚だよ〜。」 「ご結婚おめでとうございます。」 「ありがと☆」 …ご馳走様です…。 それにしてもさっきからフェリシアーノ君が静かですね…。 ちらりと視線を彼に送る。 「フェリシアーノ君は、あまり驚いていませんでしたね。」 「ヴェ?だって俺、お店入った時に、マシューに挨拶したよ〜?ね?」 なんで皆気がつかなかったの?? と、心底不思議そうな顔をされてしまいました。 …流石ですね。 さて、各自役割が決まったところで今日は解散することに。 ギルベルト君は用があるから、と店を出てする別れ、 ルートヴィッヒ君は車を回してくる、と言って離れ、 では私もおいとましましょうか、と思いましたが フェリシアーノ君に引き止められてしまいました。 「菊ちゃんせんせ、今日はありがとーございました。」 「…いいえ、私は特になにもしていませんよ。」 微笑むと、彼にしては珍しく、少し困った顔で笑みを返された。 「だって、俺一人じゃ…ずっと兄ちゃんたちに何も出来ないままだったと思うから。」 そう、皆でロヴィーノ君たちの結婚をお祝いしよう、という提案は 実はフェリシアーノ君が発端だったのです。 以前、私が推測したとおり、物凄く落ち込んでいた彼は、 私に相談してきたのです。 「…俺と兄ちゃんさ…あんまり一緒に暮らしたこと、ないんだよね…。」 「…そうですね。彼は確か…高校の時は寮に入っていましたし。」 「それだけじゃなくてさ、兄ちゃん…小さい頃は病弱で…あ、今は全然元気だと思うけど。 だから、さ…入退院繰り返して家にいない時の方が多くて、あんまり遊んだ記憶もないんだ。」 元気になっても、後継者には俺が指名されると、兄ちゃんは家を出て行っちゃった。 俺、凄く寂しくてしょうがなかった。 だって、俺は兄ちゃんが大好きだったから。 会いに行こうと思ったけど、誰も兄ちゃんの居場所を教えてくれなかった。 だから、高校で兄ちゃんに再会できたときはとっても嬉しかったんだ。 俺、ずっと会いたかったんだよ。 「なのに…。」 そんな俺よりも、兄の“特別な人”がいた。 兄ちゃんは全く気付いてなかったみたいだけど、 最初からアントーニョ兄ちゃんは“特別”だったんだ。 「ほら、兄ちゃん他人には凄く高い壁とか作ってバリバリ警戒するのにさ… アントーニョ兄ちゃんだけは最初っから壁なんてなかった。」 「そうですね…。」 「そんなのって、ずるいよ。…本当にずるい。」 俺にさえ、再会した直ぐは壁作ってたのにさ…。 時間が経てば経つほど、二人は確かに惹かれ合っていった。 でも、俺はそんなの認めたくなかった。 何で、アントーニョ兄ちゃんなの?って。 俺の方がずっとずっと、兄ちゃん大好きなのに…って。 だから、結構ずるい手も使って、二人の間に溝作ってやろうと思った。 あからさまにやると、兄ちゃんは気付いちゃうから。 だから、あくまでも自然に。 「俺、かなり酷いヤツだよね…。」 「しかし、何も障害がないと面白みにかけ…いいえ。 例え貴方が何もしなくても、上手くいくとは限りませんから。」 「ん…目論み通り、引き離せたって…思ってたんだけど…ね。」 なのに、ある日突然聞かされた、結婚。 しかも、相手はあのアントーニョ兄ちゃんだって。 「俺、頭真っ白になっちゃって。」 その場を上手く取り繕って『おめでとう』だなんて言えなくて。 だって、まさか、そんなことになってるなんて、知らなかった。 何で、どうして。嫌だよ、そんなの。…って。 わんわん泣きじゃくって、兄ちゃんに縋ってた。 「『おめでと』って…一番に俺が言うべきことだったのに。」 あのときの兄ちゃんの泣きそうな、悲しそうな顔が頭から離れない。 認めたくなんてないけど、でも兄ちゃんが自分で決めたことなのに。 俺が何かいうべきでもないのに。 「俺……今度こそ兄ちゃんに嫌われた、かも…。」 「そんなことないですよ。彼も、貴方を泣かせたことを気にしてました。」 ぽろぽろと涙を零すフェリシアーノ君の頭を撫でる。 いつの間にか戻ってきていたルートヴィッヒ君は、ハンカチを渡して。 二人でフェリシアーノ君を慰めると、彼は最後に笑ってハグをしてきた。 「よぉ〜し!兄ちゃんたちの衣装作り、頑張ろうね〜!」 「…まあぁどこまで俺が手伝えるか分からんが…。」 「えぇ、必ず成功させましょう。」 こうして、衣装班は結束を強めたのでした。 |