夏だ。容赦なくじりじりと照りつけてくる太陽にうんざりとしながら、
しかし、水着美女とひと夏の恋を満喫すべく俺はビーチにやってきた。
セクシーでキュートな水着の美女たちにドキドキしながら
そこのお嬢さん、俺と一緒にあの太陽よりも熱い恋をしませんかとばかりに
いつも以上に積極的にナンパをする俺。
なのに…どういうわけか誰一人として足を止めてはくれない。
「なんでだ!!なんでだちくしょーこのやろー!」
髪も水着も別にこれといって変なところはないはず。(むしろいつも以上に決まっているはず!)
馬鹿弟だって『ヴェー今日の兄ちゃんいつもより格好いいよー!』と
出かける前に服装チェックをしていた時に言われたぞ!
だからこそ!今日こそは彼女いない暦ん百年…なんていう黒歴史とはおさらばできると思っていたのに!
「なんっでナンパ成功しないだこのやろー!」
「まぁまぁ、そないにかっかせんと。カキ氷でも食べへん?」
レモン味にしたけど良かった?などといいながらにこにこと黄色いシロップのかかった
カキ氷の器を差し出してくるスペインを睨んだ。
一人でナンパに行くはずだったのに、何故か家を出たらこのスペインが待っていたのだ。
約束したわけでもないのに、何故居る。
無視をしようとしたが、いや待てよ。
ビーチに一人でやってくる女の子は殆どいないから
こちらも複数の方がナンパしやすいかと思い直し、
ナンパの邪魔はしないという念を押して同行を許可してやったのだが、
女の子に声をかけようとすれば『ロマーノみてみて!蟹さん居てるでぇ!』
とか『綺麗な貝殻見つけたで!』とか『ロマ、喉渇けへん?水分補給は大事やでー』とか
さっきから邪魔ばっかしやがって!このやろーっ邪魔すんなっつってんだろーが!
と頭突きをお見舞いするというやり取りがかれこれ三回ほどあった。
ほんっとマジで空気読めよこの野郎。
連れてくるんじゃなかったぜ。
ぶすっとしたままカキ氷の器を受け取って、スプーンでそれを口に運ぶ。
ヒンヤリとした氷の冷たさとレモンの爽やかな味にほんの少し気分が和らいだのだが。
ビーチにはたくさんの美女がいるというのに、
俺の隣でカキ氷を食べているのは何故スペインなんだ。
「ビーチに来てまでスペインと並んでカキ氷食うとか…ねーわ」
マジで勘弁してほしいシチュエーションだ。女の子なら大歓迎なのに…!
じとりとスペインの横顔を睨んでいると、視線に気付いたスペインが首を傾げ、
かと思えば何かに気付いたように笑顔で自分のカキ氷の器を差し出してくる。
「ロマ、こっちも食べる?」
…コイツ今確実にこっちのカキ氷も食べてみたいんだなって解釈しやがったな。
全然全く見当違いもいいところだ。
ほんとコイツいつまで経っても俺をガキ扱いしやがって…。
ムカムカとした気持ちのままにスペインの差し出してきた器に盛られたカキ氷に
豪快にスプーンを入れてかっ喰らった。
「〜〜〜〜〜っ」
頭がキインと痛くなってスプーンを咥えたまま固まっていると隣のスペインが笑っていた。畜生!
「ほら、そんな慌てて食べるからやで」
くすくすと笑い続けるスペインを恨みがましく睨みつけると
はい、とスプーンにかき氷を盛って差し出してきた。
それを、素直に口を開けて食べた。
「うまい?」
「まぁまぁだな」
「そうかー」
にこにこと笑うスペインに何故かドキリとして慌てて視線を浜辺に移す。
相変わらず艶めかしい水着美女たちが目の前を通り過ぎていくのに、
何で俺の隣にはスペインがいるんだと何度目か分からないことを自問し
負に落ちなさに苛立ちが募る。
「あっついわー」
食べ終わったカキ氷の器をゴミ箱に捨てて、スペインは空を見上げた。
眩しい日差しに目を細めるスペインにまた理解不能な胸の高鳴りを感じ、わけわかんねぇと小さく呟いた。
「な?ちょっと砂浜飽きたし海入らへん?」
というスペインに仕方ねーなと腰を上げた。
カキ氷を食べ終わったらまたナンパ再開しようと思っていたのだけど、
今日はもう諦めて元親分様と遊んでやることにした。
有難く思えよな!
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