大通りから少し外れた路地に馬車を止め、ギルベルトは立ち上がった。
「それじゃあちょっと行って連れてくるから、フェリシアーノちゃんはここで待っててくれ」
外には出ないでくれよな、と言い置いてギルベルトが馬車を降りていった。
それを手を振って見送ったあと、その後姿が見えなくなるのを
小窓から見ていたフェリシアーノは人知れず唇に笑みを浮かべた。
「ヴェーいよいよ兄ちゃんに会えるのかぁ。嬉しいなぁー」
幼い頃に離れ離れになってしまった大好きな兄がもうすぐ自分の元に帰ってくる。
会ったら一番に何をしよう。
まずはハグをして、それから…と、これからのことを考えて、
フェリシアーノは口元が緩んでしまう。楽しみで仕方がないのだ。
何しろ十年以上だ。
離れていた間もずっとフェリシアーノはロヴィーノのことを一日たりとも忘れたことなどない。
その間に募らせた想いは兄弟を思うそれとは少しばかり形を変えてしまっていた。
それを自覚していたけれど、その気持ちを口に出すことは決してしない。
誰にも気付かれてはいけないのだ。
それは大切な友人であっても、もちろん、ロヴィーノ本人にも、決して。
誰も知らないでいいのだ。
フェリシアーノは微笑んだまま、馬車を降りた。
「出るなって言われると出たくなっちゃうよね〜♪」
コートの裾を翻し、待ってて兄ちゃん。
今から会いに行くからね。そう心の中で呟いた。
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