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アントーニョのところから逃げるように出てきたロヴィーノは
こうして弟と共同生活を始めることになった。
暫くはアントーニョの家とは違うフェリシアーノの小さな家に違和感を感じていた
ものの、一週間もすればどこに何があるのか大体の把握は出来るようになった。
その間に街に何度も足を運び、一人で買い物出来るように市場の場所から家までの距離や
フェリシアーノの馴染みのバールやリストランテ、公園や教会といった場所にも行った。
それから、今後働く場所としてフェリシアーノの馴染みの女性が一人で切り盛りしている花屋を紹介してもらった。
今だ不安はあるが、フェリシアーノがフォローしてくれるおかげでなんとか
やっていけるかもしれない、と一縷の希望が見えてきた。
フェリシアーノにおんぶに抱っこじゃ兄として恥ずかしいからな。
余計なことは考えないように早く今の生活に慣れようと焦っていた。

「…っし、できた!」

茹でたパスタに特製のトマトソースを絡め、皿に盛り付けると
バジルと小さく千切ったモッツァレラチーズを散らした。

「おい、馬鹿弟ー!メシ作ってやったぞこのやろー!」

大きな声で呼ぶが、返事がない。このまま放っておいて一人で食べるのもいいかと思ったが、
後で泣かれると面倒なので仕方なく、フェリシアーノのアトリエに向かった。

「おいこら馬鹿弟、このやろー!」

叫んでみるが返事はなかったので勝手に中に踏み込むと、描きかけの絵や昔の作品だろう油絵や
キャンバスが無造作に置かれていて、絵の具の匂いが鼻をついた。
フェリシアーノの絵は大半が風景画で、どこかで見たことがあるな、という街の絵や
昔住んでいた家に、その周辺の景色の絵もあって少し懐かしい気持ちになった。

それと、やはり天使の絵だ。
絵を見るに、多分モデルは全部同じなのだろう。
髪や目の色がほぼ同じだ。何か…強い思い入れでもあるのだろうか。

「あれ、兄ちゃん?」

声に顔を上げるとフェリシアーノが二階の階段の上から現れた。

「てめー、おせーよ。何回呼んだと思ってやがんだこのやろー」
「ヴェッご、ごめん…全然気付かなかったや…」

ごめんね、と謝ってくるフェリシアーノを一瞥し、フンとそっぽを向きながら、
少し疑問に思ったので問いかけた。

「なぁ、何で天使なんだ?」
「ヴェ?」
「お前の絵、風景画の他はこういうのばっかりじゃねーか。何か意味でもあんのか?」

描きかけのキャンバスに描かれているものを指すと、
フェリシアーノはきょとりと首を傾げた。

「ヴェー…意味っていうほど深い意味はないよぉ?でも、そうだなぁ…俺、昔天使見たことあるんだー」
「は?どこで?」

尚も問いかけるが、ふふふと笑って誤魔化され、
俺の頭の上にはクエスチョンマークがいくつも浮かんでは消えた。








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このあと親分がロマがいろいろ誤解していることに気付いて ロマを追いかけて走り回ったり、 ロマと離れたくないイタちゃんと対決したりします。 イタちゃんが黒いのでご注意。 最後にサイト版の後書きに載せていたおまけ小話や、 書き下ろしでその後の西ロマのほのぼの(?)小話などがあります。 良かったら下巻もお手に取っていただければ幸いです。 2013/1/20 up